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今回の調査の結果から住民の民間療法の利用状況や意識について興味深いことがらが示唆された。それらの結果をもとに次のような仮説をたてた。
1)民間療法は、古くから伝承されてきたもの以外に、新しくメディアで流れてくるものが多い。
2)伝統医学から発祥してきた民間療法の中では、生薬を用いたものが残っていて、呪術的なものはかなり廃れている。
3)伝統的な民間療法で残っているものは、材料の入手が容易でほとんどお金がかからないものである。
4)情報入手の方法としては、伝統医学から発祥してきた民間療法は親(とくに女性)から伝えられることが多く、最近のものは親から情報を得ることもマス・メディアから得ることもある。マス・メディアの媒体としてはテレビが重要である。
5)民間療法への興味は健康問題の有無とはあまり関連しないが、実際の利用は健康問題を有する人が多い。
6)民間療法は、一時的な(急性の)健康問題への対処と健康増進のため用いられることが多い。慢性の健康問題への対処に用いられることは頻度としては少ない。
7)民間療法の効果が患者自身が「ある」と評価すれば、その療法に対する満足度、信頼度は高い。しかし、信頼度に関しては、効果だけでは説明のつかない他の要因が存在する。

 

回収率が非常に低いとは言え、今回の調査で今後の研究を進めるに当たり、有効な非常に多くの示唆を得ることができたことは、大きな収穫である。今後の方向として、他地域での傾向が同じかどうかの調査、老人と若年者の比較調査、また上記の仮説を絞り込んで行う調査、そして、頻用され、患者の効果評価が高い民間療法を選んで対照群と比較する研究が考えられる。今後も様々な角度から、民間療法への知識、理解を深め、西洋近代医学との共存をはかるべきであると考える。

 

 

 

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